都営大江戸線麻布十番駅出口を出てすぐ、鳥居坂下の交差点角には本社が、東京メトロ南北線の出口そばには駅前店がある不動産会社パシ・コム。住居や店舗の賃貸・売買のみならず、建物や土地の運用に関するコンサルティング業も行うなど、幅広く不動産関連の相談に対応してくれます。また代表取締役の渡邉ひとみさんは、麻布十番に生まれ育った生粋の十番っ子。愛するまちについても語ってもらいました。
― パシ・コムさんの創業の経緯について教えてください。
麻布十番に先祖代々暮らす土地持ちだったと想像される方もいるようですが、実は創業した父は、栃木の戦災孤児でした。遠縁を頼って上京し、そこからいくつかの事業を経て不動産業に就きました。十番の方々にとても可愛がっていただいたようで、父は常々「一番のお客さまは十番商店街の方々」と言っていました。高度経済成長の波にも乗って会社は大きくなりましたが、やはりその後のバブルの崩壊時には大変な思いをしました。さまざまな清算を行う必要に迫られ、1999年に私が代表となって新たに会社を設立しました。当初は大手企業の不動産運用部門と連携した不動産管理の仕事が中心でしたが、徐々に自社の所有物件を増やしていき、現在はビルを11棟保有しています。お客さまと建物をつなぐ仲介業のほか、物件の管理、さらにはお客さまが保有する土地や建物の有効活用などをご提案する不動産コンサルティングなども行っています。
― 不動産に幅広く関わっていらっしゃるんですね。
建物自体を所有していると、建物のことがとてもよくわかります。古くなった物件をどんな風に維持管理していくか、入居者の方に満足していただくためにはどういうサービスを提供すべきか、貸主借主双方が納得する家賃をどう設定するかなど、培ってきたノウハウと経験で信用していただいて、他のオーナー様所有の物件の管理を任せていただいたりもしています。
また、最近は、不動産の相続にまつわるご相談も増えています。当社と提携している 弁護士・税理士・司法書士といった専門家とともにお困りごと、お悩みごとにたいして全力でサポートさせていただきますので、お気軽にご相談頂ければと思います。
お引越しを考えている方にアドバイスをするとしたら「共用部をチェックすること」でしょうか。ゴミ置き場などの共用部がどうなっているのかをご覧になると、建物の管理具合の目安になると思います。またできれば、昼夜両方訪れてまちの様子を確認するといいですね。それで「このまちに住みたい」と思えるかどうか。長く住むことが多いですから、そのあたりはよく見て確認してくださいってお話することが多いですね。
― 「麻布十番で暮らしたい」と思う方は多いと思いますが、まちの魅力はどんなところにあるとお考えですか。
都心にありながら、十番にはホッとするような下町の風情が感じられるところではないでしょうか。長くこの地にある古いお店と新しく参入したお店がちょうどよく混じり合った商店街がこうした雰囲気を醸成するのにひと役買っていると感じています。そしてさらに商店街がつながりを大切にして、四季折々にイベントを開催して盛り上げているということがまちの雰囲気ににじみ出ていますよね。春の花まつり、夏の納涼まつりや七夕飾り、秋のハロウィン、冬の節分と、ちゃんと季節それぞれにイベントを開催するのはなかなか大変なものです。秋まつりでは、十番から他の場所に出て行かれた方なども「この時だけは」とお神輿を担ぎに戻ってきたりされていて、とてもいいなと思っています。私も子どもの頃には、山車を曳いたことがあるんですよ。「トントン、カカカン」というお囃子を聞くとワクワクして気持ちが高ぶったのを覚えています。こうしたお祭りやイベントはまちの人をつなげるだけでなく、他から来てくださる方々とのご縁もできるので、これからも大切にしていきたいですね。
― 一般的に、昔よりもご近所同士の関係が希薄になっている中で、麻布十番は顔が見えるおつきあいがありそうですね。
アットホームなまちなんですよね。町会のつながりもあると思いますが、たとえばレストランで出会った気の合う仲間同士のコミュニティができるというのも十番は多いかもしれません。仲間で遊びに出かけたり、食事会をしたり、十番のファンが集まる会というのが結構たくさんあると思います。グルメのまちですから、たくさん「ここぞ」という店があって、その分ファンの方も多くいらっしゃるんですよね。お客さまから「どこかお店を紹介してください」と言われることも多いので、ご希望に合わせてお店を教えて差し上げることも多々あります。たとえばお蕎麦。十番には「更科」とつくお蕎麦屋さんが3軒あるのをご存知ですか? それぞれお品書きが違って美味しいので食べ比べをしてみるのも楽しいのではと思います。中でも私の一番のおすすめは「更科堀井」さん。2024年に9代目が“現代の名工”として表彰されたんですよ。まだ食べたことのない方はこれを機にぜひ一度足を運んでみてください。
― 麻布十番の未来については、どのように思い描いていますか。
私もまだまだ若いつもりでいるので、これからも現役で頑張っていきたいとは思っていますが、未来を担うのは若い人たち。より多くの若い方々に十番に住んだり働いてもらうことが大事だろうと思います。今、十番に隣接する三田の方で大きな再開発が行われていて、マンションには相当な数の入居者が見込まれています。若い人たちもかなりの人数が入るでしょう。港区は若い人の人口が増えているので、そういう意味では、希望の光があるなと感じています。ハロウィンなどのイベント時には、小さなお子さんがたくさん歩いていて「こんなに子どもたちが暮らしていたの?」と驚くほど。ひとり暮らしの人もカップルもファミリー層も、どんな世帯でも住みやすく、また最近は外国の方も多く暮らしています。元々大使館が多いので、外国人が多いエリアですが、最近はさらにいろいろな国の方が増えているように思います。誰にとっても魅力あふれるまち・麻布十番であり続けたいですね。
― 不動産事業についてはどのように展望していますか。
日本はこれまでスクラップ&ビルドで建物を建てては壊すことを続けてきました。しかし今は建築資材の高騰や働き方改革による勤務時間の短縮なども影響して人件費が高騰、これまで1年で建っていた建物の工期が1年半ぐらいかかるようになり、賃貸にしても売買にしても価格が上がる基調となっています。これまでのスクラップ&ビルドというやり方を見直す時期に入ってきているのではないでしょうか。海外には何百年も続く建物を上手に手入れして暮らすところもたくさんあります。日本も建物の安全面には気をつけつつ、古き良きものを残していくという時代になっていくのではないでしょうか。そうしたことにも目を向けながら、不動産についてはなんでも相談にのれる会社でありたいと思います。
パシ・コム
入居者、テナントの方々が安全・安心に住み、働くための不動産サービスを提供。賃貸・売買ともにお客さまが理想とする物件の提供をしながら、プロパティマネジメントを通じて地域に根ざしたまちづくりに寄与しつつ、リノベーション事業によって不動産資源を刷新し未来へとつなげるお手伝いをする会社。
住所:東京都港区麻布十番1-5-10 アトラスビル
電話:03-5474-7400
営業時間:(月〜金)9:30〜18:00
定休日:土・日曜(内見などの予約があれば対応)
駅前店
住所:東京都港区麻布十番1-11-10 サマハウスクロダ101
電話:03-5474-1005
営業時間:(月〜土)9:30〜18:00、(土曜は隔週で営業)
定休日:日曜(内見などの予約があれば対応)